ペットのための遺言書~遺言書でできること~

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ペットのこと

もしも、ご自身の体とペットの将来が不安になったとき、遺言書で思いを伝える事ができます。
ペットは、法律上「物」として扱われるため、所有物をどうするかという考え方になります。

遺言書は、「私が死んでしまったら、こうしてほしい」という思いを伝えるための方法であり、
万が一、遺産をどうするかというもめ事が起きたときに、一定の法的な効力があります。

「口約束だけで、我が家は全然大丈夫!」という場合には、もちろん遺言書などは必要はありません。

「もしもの時は、飼っているペットをお願いね!」
「うん。大丈夫だから安心して!」
という会話だけで、すべての人もペットも安心して暮らしていけることが、本当は1番の理想です。

しかし、「遺言書があればよかったのに。」と、ならないための遺言書です。

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ペットのための遺言書とは

Aさんの飼っているペットを『たまちゃん』とします。

Aさんは、遺言書に、
「もしも私が死んでしまったら、たまちゃんを、長男のBさんに引き取ってほしい」
と書き残した場合、
たまちゃんの所有権をAさんからBさんに移すことはできますが、本当に世話をしてくれるかの保証はなく、
Aさんの一方的な指定であれば、その遺言書の内容を放棄される可能性もあります。

さらに、ペットのお世話にはたくさんの費用もかかるため、
遺言書には、お世話のお願いと財産を残すことの両方が必要な場合があります。

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負担付遺贈とは

『負担付遺贈』(ふたんつきいぞう)と言い、
お世話を引き受けてくれることを条件に、財産を渡します。という方法
です。

民法の第1002条①では、
「負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。」

と、あるため、(もらった金額以上のことには、責任はないですよ。という意味)

お世話を引き受けてくれる気持ちとして、50万円を贈るとした場合、
もしも、たまちゃんに持病があったり、3年、5年と暮らし、飼育費用や医療費などで、
100万、200万と必要になってしまった場合、
やっぱり飼えないな…と、飼育放棄につながる可能性もゼロではありません。

ペットのための遺言書を書く際には、誰にもなにも相談せず、一方的な指定ではなく、まずは書く前の事前の話し合いがとても重要になります。

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ペットのための遺言書を書く前に

遺言書を書く前に、事前の話し合いが大切です。

・たまちゃんのお世話の承諾を得ておく。
・散歩はどれくらい。持病がある際は、定期的な検査やお薬のこと。
・死後の供養について。
・金銭面でのこと。
・その他、お願いしておきたいこと。
など、しっかり確認をしてから遺言書に書きます。

「付言事項」(ふげんじこう)という項目で、法的効力はありませんが、思いを付け足すこともできます。

注意することは、
長男のBさんに「負担付遺贈」で、たまちゃんのお世話と引き換えに、相続分からたくさんの財産を渡す場合、
「遺留分」を考えることです。

※「遺留分」とは、法定相続人(配偶者や子など)が最低限の金額を相続できる権利をいいます。

Aさんは、長男のBさんだけでなく、配偶者や次男のCさんの遺留分を侵害しないよう、事前にすべての相続財産がどれくらいなのか、法定相続人は誰なのか、しっかり調べたうえで、

土地や不動産、預貯金や有価証券など、
誰に何を渡すのか、
たまちゃんのための決めごとなど、割合を考える必要があります。

他に相続人がいる場合、財産のすべてをたまちゃんのために!は、トラブルになってしまいます。

バランスが大切です。

遺言書をどのような方法で残すか

遺言書を書く際に、どのように書き残すのかも重要になります。

・公正役場での「公正証書遺言書」にすると、費用は高くなりますが確実性も高くなります。

・法務局での「自筆証明遺言書制度」を利用すると、自筆(自分で書いて)家などに保管しておくよりも、確実性があり、裁判所での開封や内容確認の手続きが不要です。

・自筆遺言書を、タンスの中など家におく場合は、内容確認を裁判所でおこなう必要があります。
相続人がタンスにしまってあった遺言書を勝手に開封してしまうと5万以下の罰則もあります。

※何かトラブルがあったときには法的な効力はありませんが、思いを伝える手段として、
最近では「エンディングノート」も一般的です。

「遺言執行者」の必要性

遺言書の内容をよりスムーズに実現させるための方法として、遺言執行者を指定しておくことが重要な場合もあります。

『遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)』とは、遺言書に書かれていることを実現させる人です。

【遺言執行者の権利義務】民法第1012条 では、
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2. 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

とあります。

例えば、
遺言書があっても、遺言執行者が指定されていなければ、金融機関で相続人全員の印鑑証明書の提出が必要になりますが、
遺言執行者が指定されていることで、預貯金の解約手続きなども遺言執行者が単独で行うことが可能です。 

遺言執行者は、遺言書に関する内容のすべてを行う権利義務があるため、
ペットのお世話がきちんとお願いどおりにされているかのチェックをして、
もしも、何もお世話がされていない状況では、注意をしたり、遺言での負担付遺贈を白紙にすることもできます。

【負担付遺贈に係る遺言の取消し】民法第1027条では、 
負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができる。この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

とあります。

遺言執行者は、未成年者と破産者以外は、誰でもできますが、
ご家族やご友人では不安が残る場合は、
お近くの専門家(弁護士や司法書士、行政書士)にお願いすることをおすすめします。

遺言執行者に関しても、遺言書が法的に有効である場合のみの権限なので、
正しい遺言書の書き方を知る必要があります。

遺言書以外の方法

遺言書は、亡くなってから開封し、その内容をもとに相続人が話し合いをするため、
不安が残る場合は、事前に「契約」を結ぶ方が確実性は高くなります。

・『負担付死因贈与契約』
・『負担付生前贈与契約』
・ペットのための信託、ペット後見

などもあります。

最後に

ご本人の意思に反して、終生飼養が実現できない状況も考えられます。
どんな状況でも、できるだけたくさんの目で見守っていくことができる、ペットフレンドリーな社会基盤の構築と、様々な選択肢があることの周知とその利用が必要です。

遺言書を残し、遺言執行者を指定して、大切なペットの終生飼養を守るという選択肢も知って頂けたらと思います。