ペット関連サービスの契約形態と利用規約の考え方
ドッグカフェ、ドッグラン、ペットホテル、トリミングサロン、犬の幼稚園、しつけ教室など――。
ペット関連の事業を運営されている方にとって「利用規約」や「契約内容」をどう作成するかは、とても重要なポイントです。
そもそも、ご自身のサービスが「どのような契約にあたるのか」を理解していなければ、トラブルを防ぐことはできません。
例えば、こんなトラブルは起こりやすいものです。
- 「お願いしていたことと違う」
- 「代金を払いたくない、返金してほしい」
- 「損害を賠償してほしい」
契約の種類を理解し、適切な利用規約を整えておくことで、事業者とお客様の認識のズレから生じるトラブルを大きく減らすことができます。
ペットを「預かる」契約は民法657条の寄託契約
ペットホテルや一時預かりなど「ペットを預かる」サービスは、寄託契約に該当します。
- 受寄者:ペットを預かる事業者
- 寄託者:飼い主(お客様)
- 寄託物:ペット(民法上は「物」として扱われます)
無償寄託契約
お金を受け取らずに預かる場合は、自己の財産と同程度の注意義務が求められます(民法659条)。
有償寄託契約
料金をいただく場合は、善管注意義務(より高度な注意義務)が発生します。
つまり、一般的に期待される知識や判断力をもって、適切な管理を行う義務があるということです。
万が一事故が起きた際には、「どのように管理していたのか」を説明できる体制が必要です。
預かり時・引き取り時にペットの状態をお客様と確認することも、トラブル防止につながります。
しつけ教室・犬の幼稚園は民法656条の準委任契約
ペットの訓練は「仕事の完成」ではなく、「業務の遂行」が目的となるため、準委任契約にあたります。
- 訓練の結果を保証するものではない
そのため、事前に 訓練内容・期間・料金・支払い方法 を具体的に決めておくことが大切です。
また、前払いの回数券などを販売する場合、途中解約に関して「返金しない」とする契約は、消費者契約法により無効とされる可能性があります。
一方的に事業者だけに有利な契約は避けなければなりません。
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さらに、準委任契約でも事業者には善管注意義務が課されます。
「何をしたのか、何が変わったのか」が見えにくいサービスだからこそ、明確な説明と合意が不可欠です。
トリミングサロンは民法632条の請負契
トリミング(カットやシャンプーなど)は、「仕事を完成させる」ことが目的のため、請負契約にあたります。
- 依頼内容どおりに仕上げる義務がある
- 契約不適合責任を負うため、不十分な仕上がりの場合はやり直しが必要
- 完成しなければ報酬を受け取れないだけでなく、損害賠償責任も負う
ただし「イメージが違う」といった主観的な理由は、契約不履行には直結しません。
だからこそ「完成の基準」を契約書などで事前に明確にしておくことが大切です。
まとめ
ペット関連事業者様は、
- お客様とペットの安心を守ること
- ご自身の事業をリスクから守ること
この両方を同時に考える必要があります。
そのためには、他店舗の利用規約をそのまま使うのではなく、ご自身のサービス内容に合わせて利用規約を作成することが欠かせません。
トラブルを未然に防ぎ、安心して長く事業を続けていくために、ぜひ一度、契約形態と規約内容を見直してみてください。
ペット関連事業に関する利用規約の作成は、小林行政書士オフィスにお気軽にご相談ください。
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