普段、耳にすることが少ない【ラムサール条約】ですが、本当はとても身近な存在であるため、ご紹介をさせて頂きます。
ラムサール条約とは?
ラムサール条約とは、1971年2月2日にイランのラムサール(カスピ海沿岸の町)での国際会議で採択された、湿地に関する条約です。
国際的に重要な湿地及びそこに生息・生育する動植物の保全を促進するため、各締約国が湿地を指定、登録をし、とるべき措置等について規定しています。
環境省HP ラムサール条約と条約湿地
外務省HP 地球環境 ラムサール条約
ラムサール条約の3つの柱
①水鳥のためだけではなく、私たちの生活を支える重要な生態系としての湿地の保全・再生
②湿地の「賢明な利用(Wise Use:ワイズユース)」という考え方で、大規模な埋め立てや開発を行わず、湿地の生態系を維持しつつ、農業や漁業など地域の人々の生業や生活とバランスのとれた保全を進めること
③交流、能力養成、教育、参加、普及啓発を進めること
条文(全文)
特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約 (PDF)
人間は、環境と相互に依存しており、湿地の基本的な生態学的機能を考え、湿地を喪失すると取り返しがつかなることを知り、
水鳥は国際的な資源であり、国内政策と国際的行動とを結びつけることにより確保されるものであることを確信して、この条約が協定されています。
適用される湿地とは?水鳥とは?
湿地とは、水と陸の接点にあり、淡水や海水によって冠水したり、覆われたりする低地をいいます。
多様な動植物の生育・生息地となり、生物多様性の保全の上で極めて重要な生態系です。(環境省 日本の重要湿地より)
ラムサール条約の第一条では、
1 この条約の適用上、湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的なものであるかを問わず、更には水が滞つているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が六メートルを超えない海域を含む。
2 この条約の適用上、水鳥とは、生態学上湿地に依存している鳥類をいう。
と、定義されています。
渡り鳥が集まる藤前干潟(ふじまえひがた)
名古屋の南西部の庄内川、新川、日光川の河口部には、藤前干潟があります。
1981年に、ごみの埋め立て計画が発表されましたが、干潟を守りたいと市民の声が高まり、1999年に埋め立てが中止され、2002年11月18日に、ラムサール条約に登録された湿地です。
私も一度だけ訪れたことがあります。
野鳥観察館や、稲永公園、稲永ビジターセンターなどもあり、とても静かでゆったりとした場所でした。
展示されている資料の中では、ごみ(釣り糸など)が多いことも、とても印象的でした。
野鳥観察館から見えた鳥たちも、とても愛らしかったです。
海辺を守るために
水鳥は、海辺で潮干狩りをしている人々には結構無頓着でも、カメラを水鳥に向けて近づくことは、とても脅威を与えるため、できるだけ堤防の上から撮影すること。
擬傷(ぎしょう)行動を見たら、ヒナが近くにいる証拠なので、すぐに離れることも大切です。
シロチドリは大潮満潮時に冠水する場所では産卵しないため、波打ち際での釣りは問題ありませんが、休憩する場合は気を付けること。
ラムサール条約に登録されておらず、地元の自治体でも注目していない湿地が数多く存在しています。
自然保護の視点から規制する法律や条例がほとんどなく、海岸部に太陽光発電が数多く建設されたことで、チュウヒ(タカ科)が越冬するヨシ原が消滅しました。
(参考:すばらしい海辺をいつまでも 日本野鳥の会三重より)
※「擬傷(ぎしょう)行動」・・・迫真の傷ついたふり シロチドリ、… (朝日新聞デジタル記事より)
ラムサール条約自体は、あまり身近な存在ではありませんが、海や川、湖などの湿地は、身近にたくさん存在し、そこにはたくさんの生き物が生息しています。
海辺や川、湖や河口、干潟などを訪れる機会が全くなくても、生活排水が川に流れ、やがて干潟や海に繋がっています。
下水処理施設だけに頼るのではなく、
ラムサール条約というものがあり、鳥や多くの生き物が湿地で生息していることを、少しだけでも知ることで、
日々の暮らしの中で、できるだけ水を汚さない。ごみはゴミ箱へ。という少しの意識が、まずは大切なのではと思います。
少しでも参考にして頂けたら幸いです。