ドッグランとは?
ドッグラン(ドッグパーク)とは、飼い主様の管理のもとで、愛犬をノーリードで自由に走らせることができる場所を指します。
愛犬が楽しそうに駆け回り、それを飼い主様が微笑ましく見守る光景は、とても素敵な時間です。そうした空間を提供したいと考える方も少なくありません。
ドッグランでは、事業者がお客様の犬を取扱うわけではないため、動物取扱業の登録の必要がなく、スペースさえあれば、誰でもドッグランを開業することができます。
※市街化調整区域や用途制限のある地域など、土地の利用に制限がある場合もあるため、その土地がドッグランとして利用ができるかの確認は必要です。
ドッグランの運営に必要な資格はありませんが、犬がノーリードで遊ぶ場所を提供するということは、動物取扱業者と同じくらいの知識が求められることは間違いありません。
知らない犬同士がノーリードで同じ空間を利用するということに、細心の注意が必要です。
安全管理が不十分なまま、「当店は一切責任を負いません」という体制では、事故やトラブルが起きてしまい、ドッグラン事業を継続できなくなってしまいます。
安全管理をしっかり行い、厳しい利用規約を定め、ご理解とご協力を頂いたうえで、存分に楽しんで頂く事がドッグラン運営で何より大切なことだと考えています。
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ドッグラン運営に必要な資格・許可
- ドッグラン単体運営:特別な資格は不要
- カフェ併設:飲食店営業許可が必要
- トリミングサロンやペットホテル・一時預かり併設:第一種動物取扱業「保管」の登録が必要
- 看板犬を設置する場合:第一種動物取扱業「展示」の登録が必要
- 犬用おやつの製造販売:テイクアウト用は「ペットフード安全法」に基づく届出が必要
※イートイン場合は、対象外のため届出は不要 - 自動販売機設置:飲食物の提供の方法によって食品衛生法の対象となる場合あり(要確認)
具体的な判断は必ず保健所・自治体への確認が必要です。
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立地のポイント
- 近隣住民に迷惑がかからない場所
- 駐車場から安全にアクセスできる導線
- 犬が落ち着いて過ごせる静かな環境
- 駐車場からドッグランまで、可能な限り施設内で完結できる仕組み
※お客様が駐車場に車をとめて、施設外の近隣に散歩に行かれてからドッグランを利用するという流れにならないよう(事業所周辺がトイレにならないよう)、駐車場からドッグランまで、可能な限り導線の仕組みを考えておく必要があります。
設備面での工夫
- 芝生や土など、犬に優しい地面
屋内の場合は、滑りにくく、掃除ができることが大切です。 - 脱走防止のフェンス(高さ1.5m程度)や二重扉
木と木の間から、脱走してしまうケースもあるため、脱走には十分注意が必要です。 - 山や谷などを地形に起伏をつける際、いきなり鉢合わせる事で取り乱すことがないよう、犬の目線から死角ができないように高さと幅の調整を考えること。
- 小型犬・中型犬・大型犬でスペースを分ける仕組み
1つしか場所がない場合は、曜日や時間帯ごとに分けたり、大きさを限定するなど。 - 水飲み場・足洗い場・手洗い場の設置
犬の飲み水の提供等は、蛇口から直接飲まないことなど衛生面を考慮する。 - 屋外では日陰の確保。南側に高い木や屋根など。
- トイレコーナーを設置し、衛生面に配慮
汚物は持ち帰りを基本としたうえで、ドッグラン内で広範囲での、マーキングや排泄を事前に防止するため、排泄コーナーを設けることも考える。
屋外の場合は、緑陰など。屋内の場合は、トイレシーツなど衛生面を十分に考慮したうえで設置。 - 飼い主が犬から目が離れがちにならないために、できるだけベンチは設置しない。
利用規約の重要性
安全な運営のためには、厳しめのルール作りが欠かせません。
最低限のルール例としては以下のようなものがあります。
- 狂犬病・ワクチン接種済みであること
- 生後6か月以上であること
- 発情期のメスや攻撃的な犬は入場禁止
- ノーリードは1人1頭まで
- フレキシブルリードの使用禁止
- 子供(18歳以下)は、保護者同伴であること、乳幼児やベビーカーの入場は禁止
- 入退場の際は、リードを着用すること ※少し慣れてからリードを外すこと
- 犬から目を離さない
- 犬をドッグラン内に残して、飼い主だけ外に出ることはしないこと
- 犬同士が興奮した際には、直ちにリードを着用し、落ち着かせること
- おもちゃの使用の禁止または、他の犬にも注意をして頂くこと(奪い合いの原因になるため)
- 他の犬に勝手に触れたり、おやつを与えない
- 飲食、喫煙禁止
- 無断でオフ会、パーティー等のイベント禁止
- 営業行為の禁止
- 大声や奇声は発しないこと
- 汚物は持ち帰ること
- 犬のブラッシング禁止
- 事故が起きた際は、飼い主は保健所に咬傷事故の届出をすること
※当事者間で解決をして頂くこと - 規約違反の場合は退場の可能性あり
などの内容から、施設に合ったルールを考え、規約として作成する必要があります。
さらに、同意書に署名をいただくことで、より安心感を高めることができます。
同意書の必要性
ドッグランを利用する際に、利用規約に同意をして頂いた事の証明として、
・飼い主様の名前
・連絡先
・犬の名前、性別、犬種
などの記入をお願いすることで、無記名で利用して頂くよりも緊張感を持ちながらドッグランをご利用して頂けます。
※個人情報をお預かりする場合は、プライバシーポリシーの事前作成をおすすめします。
ドッグランを選んでもらうために必要な工夫
屋外のドッグラン施設では、雨の日と真夏・真冬は集客が難しく、屋内でのドッグランでは、雨の日や真夏・真冬には強いのですが、公園に比べて広さが十分でない場合、お天気がさえ良ければ、外の方が良いと感じてしまい、お散歩日和の際には集客に悩んでしまいます。
公園でも散歩は可能な中で、あえて「料金を払ってでもドッグランに行きたい」と思っていただける仕組みが必要です。
例えば、
- アジリティ設備やドッグスポーツ体験
- 地域のコミュニティ形成の場
- 完全予約制や広さの確保で安心して利用できる環境
- しつけ教室やイベントの開催
など「ドッグラン+α」の価値を打ち出すことが大切です。
最後に
ドッグランは、犬と飼い主様にとって素晴らしい空間ですが、運営には知識・安全対策・明確なルール作りが欠かせません。
実際には、特に犬の知識がなくても誰でも始められるということで、事故やトラブルが起きてしまうことがないように、計画的な開業が大切です。
「ここだから行きたい!」と思っていただける工夫を加えることで、地域に愛されるドッグランになるはずです。
運動好きな犬達と過ごされる飼い主様の、日々の生活を支える基盤として、地域社会に理解されるドッグランがもっと身近になっていくといいなと思います。
開業支援や利用規約、同意書、プライバシーポリシーの作成など、当オフィスにご相談ください。